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株式会社えとじや

マーケティングなんでも相談所

えとじやに来て、はじめての「山歩き」
COLUMN

えとじやに来て、
はじめての「山歩き」

文 池田凪・写真 中村年孝

 こんにちは、凪。です。
 私はデザイナーですので、いわゆる「マーケター」としての経験はなく(デザイナーも広い意味ではマーケターですが)、ここで、ためになる記事を書くのは難しそうですので、これまでのお仕事の感想をひとつ書いてみたいと思います。
 何か少しでも、違う立場からの視点を感じていただけたら幸いです。
 数年前、私がえとじやに入社して、はじめて深く関わったお仕事についての話です。

 仕事は、神戸のプリザーブドフラワー店の店主、OKDさんからのご依頼でした。

 最初はギフト用のラッピングを依頼したい、とだけお聞きして、お店にお邪魔したこともなかったので、まずは、ホームページを見て、
 (なんかナチュラル系のテイストがお好みなのかな~?)
 なんて、なんとなくイメージしていました。(なんと適当な…。)

 いよいよ、実際にお店をたずねてみると…、
 よく見ていないと見逃してしまいそうな小さくて急な階段を上がり、
 静かな通路にガラス窓つきの扉があって、
 中が少しだけ見えますが、正直、気軽には入りにくい外観です。
 なんか、秘密のお店というか、空間に入り込むみたいで、
 (ここで心が折れているお客様もいらっしゃるかもしれません。少なくとも、ちょっとドキドキしますね、扉を開けるのに)。

 店内には、たくさんの商品だけでなく、加工前のお花はもちろんのこと、ガラスの器などの資材が積み上がっており、まるで魔法の材料が並んでいるような雰囲気です。

 OKDさんに、お話を聞いてみると、プロポーズなどのプレゼント用のお花を求めてくるお客さんが多く、そんなお客さんにOKDさんは、ひとりひとりのエピソードや好みを聞いて商品をつくり、さらには、しばしば商品以外の、プロポーズとかの相談にものっているそうです。

 なんか、シチュエーションばっちり!
 OKDさんの魔女みたいなキャラも最高!
 と、デザイナーゴコロが刺激されまくります。

 ホームページなんかをみて、私みたいに「普通のプリザーブドフラワー屋さんだろうな」と思っている人がいたら、あまりにもったいない。
 (このお店の空気がそのまま伝われば、もっともっと素敵になるやん!)
 とは思ったものの、じゃあ何から始めればいいのか?
 ラッピングを変えるだけで実現できるのか?
 と、何をしていいかわからなくなってしまいました。

 店主お。いわく、「お客さんは何を買いにきているのか考えてみよう」。
 お。に導いてもらい、お客さんはお花そのものを買いにきているというよりは、プロポーズ請負人(OKDさん)のお墨付きをもらいに来ているのではないかと思い当たりました。

 妄想が広がります。(ポワ〜〜ン)

 求める者だけが見つけられる、細い階段…
 そこを上がると現れる秘密の小部屋には、
 植物の魔力を操る魔女が待っている、
 魔女は求める者の声を聴き、願いをかなえる花を作り出す。

 そんな不思議で変わっていて、でも信頼できるお店の印象を伝えたく、ラッピングだけでなく、ロゴやホームページに関しても変えることをご提案しました。
 途中から、私の師匠であるパートナーのデザイナーさんに入っていただいて、いろいろと仕上げていきましたが、どれも、最初の私の妄想にぴったりの素敵なデザインになりました。
 のちに頂いたOKDさんからのお手紙では、この件のことを「山道を歩くためのポールを依頼したら、リュックの中身を整理して地図を作ってくれて歩きやすくなった」と、山歩きに例えていらっしゃいました。
 ブランドの方向みたいのをはっきりさせていただいたことで、OKDさんが今後も、「この道、この道具、この…」と選びやすくなったのではないかと思います。
 (自画自賛ですみません。)
 私にとっては、ひとつのお店とじっくりお話して、一緒に荷物をたたみなおし地図を作っていく、貴重な体験でした。
たくさん学びのある、楽しいお仕事に関わらせてもらえて感謝しています。
 OKDさん、ありがとうございました。


〈お。追記〉ブランド戦略、ブランディング、には、ここで書かれている「雰囲気」というのをきちんと決めていくという、とても大切な作業があります。それは、ベネフィットなどと同じ、エクイティにおける戦略的な構成要素で、ときにブランドキャラクター・人格と呼ばれたり、大義の一部だったり、また、デザインテーマという要素としてまとめられることもあります。
 ブランドマーケティングとは、マインド=理屈とハート=感情とセンス=感覚とソウル=大義を戦略的に構成していくものなんですが、ここに書かれている「体験」は、それら、センスとハート・マインド、もしかするとソウルまでもをつないでいく、世の中ではなんとなく「デザイン」という名で呼ばれることの多いものに関する大切な作業なのだと思っています。
 具体的には、メタファーという手法を用いて、ブランドの各要素をまとめあげていく作業ですが、このあたりのことは、「ことはことばに…」をご参照ください。