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株式会社えとじや

マーケティングなんでも相談所

やっぱり何をしてくれるのか
BENEFIT
女性にお金を払ってもらうということ

やっぱり何をしてくれるのか

文 岡本晋介・写真 島貫泰至

 前章では、女性は(一般に)ベネフィット=自分にどんな(いい)ことが起こるか、に興味を示し、それでその商品やサービスにお金を払うかどうかを考える、というお話しをしました。
 おそらく、女性の方は、「このおっさんは何をあたりまえのことをつらつらと」と思ってらっしゃることでしょう。しかし、機能や性能あるいはスペックを重視する傾向にあり、ベネフィットについてはかなり漠然としたものを好む男性にとっては、少しは「なるほど」だったのではないでしょうか。

 さて、このセクションでは、じゃぁ、「XYZ成分Q%配合!」とか、化粧品などで原料や材料を全面に押し出してうまくいっているのはどういうことよ?についてお答えします。

やっぱり、「私に何をしてくれるのか」で決めます

 先に答えを。
 やっぱり、女性は、その商品が私に何をしてくれるのか、私にとってどんないいことが起こるのか、すなわちベネフィットで興味を持つか、買ってみるか、を決めます。
 では、ヒアルロン酸とか、コエンザイムQ10とか、レチノールとか、あれは何?ということになりますよね。どうみても化学的な言葉だし、おそらく有効成分(原料・材料)の名前ですから、ベネフィット(何をしてくれるか)ではなく、機能・性能・スペックです。

 簡単な答えで申し訳ないんですが、あれは、女性の間で通じる「コード(暗号)」で、例えば「ひあるろんさん」と書いて「むっちゃうるおう」と読む、それだけのことです。

 ただし、このように、ある成分名が一般的に通じる暗号(矛盾してますね、でもわかりますよね)になるためには、先に人々の記憶の中で「=」の関係ができていない限り、並々ならぬ努力(お金)がかかります。もともと薬の世界で始まったことなんだと思いますが、実際、有名グローバル化粧品メーカーさんたちは、もんのすごいお金をかけて、化学やバイオテクノロジーの分野のみならず、世界規模で皮膚科学会やらにも「ご協力」し、数年先に流行る成分作りと流行らせることにいそしんでいらっしゃいます。そして、それがハイエンドの世界で有名になったり、セレブの間でひそかに流行った(ことにした)り、じわじわとデパートで売られている高額の商品に配合され、雑誌で取り上げられ、少し安い製品にも配合されるようになり…で、私たち庶民の耳に届き、目に触れ、手が届く、というわけです。
 まぁ、あの業界では、法的な規制などで「しわがなくなる」とは言えないので、「しわのもとにもなるといわれているのは細胞の劣化。ところで、XYZは、肌の細胞に働いて、細胞のはり・ふくらみに影響を与えていると言われています。あぁ、そうそう、ところで、この製品にはXYZ成分がQ%入ってますよ」と。

 話がそれてしまいました。
 例えば化粧品などでは、成分名でモノを売っているように見えて、実はそれは「=」の関係で結ばれているベネフィットのコード(言い換え)だということです。健康食品などの世界でもよく出てきますよね、こういうの。あるいは、古くから信じられている成分や原料、あるいは産地が暗号になっている場合もあります。
 男性相手のマーケティングでは、成分の働き=性能というロジックが成り立つことが多いのですが、女性相手のマーケティングでは、この「=」がどんないいことをしてくれるのかにつながっていないとだめなんです。あるいは、「=」が成立するような投資をする(大企業限定)。
 ですので、「最近、成分名が流行りだから、うちも成分名を全面に押し出して売っていこう!」とか勘違いしてしまうと、出してから「あれ?」ということになったりするので要注意。
 ともかく、「補酵素前駆体ABCが細胞に取り込まれることで細胞分裂が活性化される」とか、「高速全方向回転ノズルで瞬時にすみずみまで届く」とか言ってる場合ではなく、「肌がいきいきしてきます」、「部屋中あっという間にすっきり」って言いましょう。

 ということで、「やっぱり女の子は、私に何をしてくれるのか、で、興味を持ち、買うかどうかを考える」でした。
 
次は、「でも、車はかっこいいから買うんだろ?女の子だって、かわいい、ってモノ買うじゃん」のお話しでもしましょうかね。