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株式会社えとじや

マーケティングなんでも相談所

女の子は欲張り?
BENEFIT
女性にお金を払ってもらうということ

女の子は欲張り?

文 岡本晋介・写真 島貫泰至

 さてシリーズの3つ目ですが、いよいよ核心に入っていきます。というほどでもないのですが、これ、30数年の山ほどの失敗と少しの成功から学んだことで、わりと「奥義」だったりするので、出し惜しみしながら。(なんじゃそりゃ?)

 広告の仕事をされている方なら「そういえばそうだよね」だと思いますが、いわゆる広告賞の上位作品の顔ぶれを見ると、海外国内を問わず、女性の消費財の広告が少ないことに気づかれることでしょう。以前、カンヌに滞在して、片っ端からノミネート作品を見たことがありますが、上位作品だけでなく、そもそもエントリが少ない。(しかも、たまに出てくると会場からブーイングや失笑がわきあがったりして、随分気分を害した覚えがあります。)
 どうしてなのか。
 まず、そもそも女性の審査員が少なかった、というのもありますが、実はそれだけではありません。
 広告賞を取るような広告というのは、とってもシンプルにできていなくてはならなくて、たいていの場合、ひとつのことを伝えることに集中しています。実際、そうすることで、作品として質が高くなっているのみならず、「モノを売る」力の強い広告になっているのですが、これが女の子に消費財を買ってもらうコミュニケーションを作り上げることと、ある意味相反するんです。
 女性に関心を持ってもらって、納得してもらって、好きになってもらって、買ってみたいと思ってもらおうと頑張るほどに、「広告賞」的な評価からは遠ざかっていく。

女の子は欲張り?

 それは、女の子は欲張りだからです。
 あるいは、別の言い方をすると、女性はバランスのとれたものを求めている。
 男の子は、何かが突出していいものであれば、あとは適当でいいんです。
(話がわかりやすくなるように、極端に書きますが、しかし、こうして考えるほどに、オトコって、バカですねぇ…しみじみ。)

 例えば、男性は「かっこいい」で十分です。さらに、何がどれほど・どのように・なぜ、かっこいいかが分かれば、心を動かします。それに対する確信を得るために性能やスペックを気にするんですね。

 一方、女性は「かわいい」だけでは動いてくれません。
 「かわいいだけじゃない」ことを自身に納得させ、
 それを買うことが損にならないと考えてもらい、
 結果として自分にいいことが起こる確率が低くないと思ってもらわないといけない。
 よく男性の購買行動の典型例に車の話をしますが、別に女性は車に全く興味がない、とか、女性なら誰もが「車は走ればいい」と思っているわけではないんです。彼女たちも、ちゃんとどれがかわいいか、かっこいいかを見ています。むしろ、積極的にそれを判断しています。スペックやエンジンの性能や型式にこだわりが少ないだけです。「車は走ればいい」って言っている女性でも、ちゃんと「かわいくない車」をリストから排除しています。
 むしろ、「かわいい」ことにとても素直ですね。高級ヨーロッパ車と日本製の軽自動車を同列に扱って、こっちのほうがかわいいな、色が素敵だし、とか、男性には思いもよらない比較をしていたり。
「こっちの(マセラッティの)クリーム色より、この子の(ラパンの)パールのほうがかわいい!」
(はいはい…。)

 しかし、それだからと言って、「かわいい」のはなぜか、どのようにどのくらいかわいいか、誰がデザインしたのか、どうしてこの色が出せるのか、といったようなことをつらつらと語ってみても、何にもならないのです。ここが男の子と違いますね。
 では、何が必要なのか。

  • かわいい、あるいは、かっこいい、素敵、などと思ってもらうことは、必須。
  • それに加えて、「それが私に具体的に何をしてくれるのか、簡単だけど納得のいく説明」をしなければなりません。これも必須。
  • しかも、「それが私の生活にどんな素敵な結果をもたらしてくれる可能性があるのか」に思いをはせてもらわなければなりません。これも必須。

 この3つ、すべてがバランスよくそろって、初めて彼女の心は前に動いてくれるのです。

 「かわいいし、おいしそうね。何々?繊維がたっぷり摂取できて、1本で1日分?いいじゃん。もしかして、お腹もすっきりって?まっさかぁ、でももう春だしね。」

 はい、お買い上げ。みたいなことです。簡単にまとめすぎたかしら…。
(そりゃ、3つもてんこ盛りの広告が賞を取れるわけがないわな。3つをひとまとめにできるアイディアができればいいんですが、それはそれで至難の業。)

 次も、この「欲張りな3つのお願い」について考察を続けます。