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株式会社えとじや

マーケティングなんでも相談所

マーケティングの仕事は「➡︎」だけど、マーケターの仕事はその前後を知ること
MARKETING

マーケティングの仕事は「➡︎」
だけど、マーケターの仕事は
その前後を知ること

文 岡本晋介・写真 松本卓也

認識・感情、そして行動の「➡︎(変容)」

 とてもとても基礎的なお話しですが、マーケティングの役割は、「認識や感情を変容させ、行動が変わるように仕向ける」ことだと思います。

 例えば、「必要かもと感じている➡︎必要だと知っている」と。
 この「➡︎」に当たる部分が、マーケティングの戦略だったり、具体的な施策だったりするわけですね。
 ある広告を見て、とあるDMに接して、SNSでにぎやかな話題に触れて、ある人の意識が変化して、使用や購買の行動につながる。それが「➡︎」です。
 なので、みなさん、この開発に(思い付きに)時間とお金を費やし、または、外部の専門家にコンサル料をお支払いしたり、大手広告会社に大枚をはたいたりする。(んで、失敗したら、また別のことを考える。)
 もちろん、それこそが、世の中に出て、人々の目に触れるものなので、とっても大事なんです。手を抜いてる場合ではない。お金も時間もかけるべきです。
 でも、より効果的な「➡︎」を生み出すために必要なことを、探り出し、定義し、決めることのほうが、ずっと大事だと思うんですよね。
 「A➡︎B」のAとBについて良く知り、「なるほど~」な言葉にまとめ、「よし、それで行こう(それ以外は気にしない)」と決めること。
 それを(鮮やかに)やってのけるのが、マーケターなんじゃないか。

 前章で、K。が「買わない理由を聞いてもあなたは何もできない」で議論しましたが、やっちゃうんですよねぇ。
 「どうして買わないんですか?」って聞いてしまう。
 とても多くの(まじめな)マーケターたちが、Bに変化しなかったひとに「どうして買わないんですか?」と聞く…。
 もちろん、答えは出ません。
 では、何をすべきなのか。
 以下、(ほぼ)鉄則です。

「どうして買わないのか」を知りたければ・・・

  • Bのひと(なるべく最近、意識・行動が変化したひと)に会いに行って、どんなひとなのかを知り、そのひとが、どういう状況で、何をきっかけに、どういう気持ちで、その変化を乗り越え、今、どう考え感じているのか、以前とどう違うのかを知る。
  • Aのひと(意識・行動が変化しなかった・していないひと)に会いに行って、「どうして変化しないのか」を聞くのではなく、どんなひとなのか、Bのひとと似ているのか、違う感じのひとなのか、どんな生活をしているのか、何を大事に思って生きているのか、あなたの製品・サービスのカテゴリについて、どう考えているのか、を知る。

 つまり、買わなかったひとに、買わなかった理由を聞くのではなく、どんなひとなのか、代わりに何をしているのかを知る、買ったひとに、なぜ買ったのか、どこが良かったのかを聞くよりも、どんなひとなのか、何が変わったのか、そのきっかけは何だったかを知る、ということ。
 まぁ、ブログで何度も書いていますが、「答え」を聞きに行くのではなく、答えにつながるヒントや状況を理解しに行く、ということですね。答えは、あなたが考えること。あなたはそれでお給料をいただいているわけなので。

糖質0%『えとじやスナック』をめぐる冒険

 「糖質0%『えとじやスナック』」、もうひとつ売れないので困っています。
 担当者アキヲ君は、「A:知ってはいるけど買っていない➡︎B:買って食べた」と行動の変容を規定したうで、意気揚々と調査に出かけます。
 Bさんに、「なぜ買ったんですか?」と聞くと、「最近、糖質を気にしているので」と答えます。
 (ほら、やっぱり!)と、今度は、Aさんに聞きます。
 「Aさん、なぜ買わないんですか?」
 「あ、いや、別に…。糖質とか、よくわからないんで。」と。
 (ほ~ら、やっぱり!)
 と、アキヲ君、「糖質とは!」という広告を大量出稿。
 そして大量出血。

 ある日、アキヲ君はどこか遠くに転勤させられてしまい、代わりにハルナさんが担当に。
 彼女は思います。
 (もっとBさんのことを知りたい。)
 そして調査に出かけます。
 Bさんの普段の生活や、バッグの中身、コンビニでの買い物、冷蔵庫の中などを、そしてそもそも、Bさん自身の姿を観察しました。
 (あれ?Bさん、冷蔵庫にも部屋にも、すぐ食べられるお菓子があちこちに置いてあるぞ。しかも、ちょっと疲れたときには、とか言って、しょっちゅうアイスクリームとか食べてるし。え?昨夜はコンビニのかつ丼だったの?)

 ハルナさん、(これはもしや?)と、Aさんにも会いに行きます。
 Aさん、「なんかね~、ちょっとおなかすいたりしても、我慢するようにはしてるんです。夕食に響く気がするし、何より、間食って良くない気がして。でも、やっぱり時々は食べちゃいますよ、お菓子。昔から食べてるチョコレート菓子ですね、やっぱり食べなれてるし」と。
 でも、よく観察すると、部屋の中に他のお菓子が無いわけではないし、コンビニで、新製品チェックとかもやっているようです。
 「糖質とかは、気にされますか?」
 「いや、よくわからないんで。難しそうだから、あんまり気にしないようにしてます」

 そこで、ハルナさん、下記のようにまとめなおしてみました。

A)知ってはいるけど食べていない。糖質とか言われてもよくわからないし、せっかく食べるのにおいしくないとがっかりなので、間食は我慢しつつも、結局は食べるので、せっかく食べるときは確実においしそうなものを選ぶ。

B)買って食べている。「えとじやスナック」は、小腹がすいたとき、罪悪感を抱くことなく食べられるので、とっても便利~。他の、明らかに太りそうなお菓子ばかり食べてると良くなさそうなので、それらの間に「えとじやスナック」を挟んで気分的にリセットしている。おいしいし、気に入ってる。

 どうでしょう?
 なんか、やるべきことがはっきりしてきませんか?

 そうでもない?
 例がわかりにくい?
 すいません…。